この方が岩野市兵衛氏です。
越前和紙の宝であり福井県唯一の人間国宝。
この方と知り合い、お願いしたことで純楮耳付き名刺が完成いたしました。
岩野市兵衛氏の緻密な仕事ぶりをご紹介させていただきます。
昔から変わらぬ製法で作られる越前生漉き奉書の原料を100%使い切ることで出来る一枚漉き(耳付き)名刺。厚さも十分にあり大変希少な贅沢な紙です。
これが何かわかりますか。
人間国宝岩野市兵衛氏の生漉き奉書原料となる日本産の那須楮です。(楮と呼ばれる植物の木の皮)市兵衛氏はこの原料を契約農家で栽培。この楮(こうぞ)のみを使って版画用紙を漉いております。
この楮のみを使っての一枚漉きの名刺。
どのような名刺ができあがるのでしょうか。
これが、窯場。この窯で楮の原料をソーダ灰で煮ます。
ソーダ灰はアルカリ性が苛性ソーダに比べて弱く繊維を痛めないので繊維の長さと光沢を損なうことをことはありません。
ここから全てが始まります。
岩野市兵衛氏の原料は全てが手仕事。一本、一本楮の繊維を丹念にチリをとることから始まります。科学薬品を使わない自然界の光沢は手仕事のみによるチリとりによって行われます。
このチリよりによって純白ではない生成りの乳白色が生まれます。晒し粉を一切使わずに水によるイオン効果のみでの楮。繊細で細かい膨大な作業が必要になります。
岩野市兵衛の純楮名刺はこの繊維で出来ております。この繊維の長さがまるで毛皮のような光沢を生みだすのです。繊維のゴミやチリを取ることに膨大な手間をかけること。「古代から現代まで変わらず惜しまずに手間をかける」このことが岩野市兵衛の人間国宝たる所以です。
ここからが私の出番です。楮のみを使っての紙漉き。
ここで使われる国産の那須楮は繊維が非常に長く耳付きに仕上げるのは非常に困難を極めました。
この繊維を一枚漉きの桁に入れ紙を厚く漉きあげることは非常に難しい作業です。
信洋舎製紙所の乾燥は昔ながらの感想方法です。この製法を使うことによって紙質が独特の柔らかな紙となります。市兵衛さんの名刺も同様の方法で乾燥します。
市兵衛氏の名刺は明治時代のロール機で仕上げます。このロール機で楮に圧力をかけることで、紙に「艶つけ」を行います。楮の繊維に圧力をかけることで、皮のような光沢が顔を出します。